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潜水艦イ-57降伏せず(★★★★)

おすすめ度★★★★(5段階)
一言紹介:和平工作のため大西洋を目指す潜水艦のドラマ。題名の「降伏せず」とは?
1959年、東宝製作。
監督:松林宗恵特技監督円谷英二、音楽:團伊玖磨、脚本:須崎勝弥、木村武
出演:池部良三橋達也平田昭彦久保明、土屋嘉男、藤田進、高田稔


 潜水艦の映画ということで、タイトルからは地味な印象を受けるが、実際には「日本のいちばん長い日」「太平洋の嵐」と同じくらい面白い。日本の戦争映画で5本指に入るかもしれない。


 ストーリー:終戦(停戦)も近い1945年、日本帝国海軍の潜水艦イ号57は特別任務を帯び、大西洋の島に向け出航した。その特別任務とは、和平工作のために他国の外交官父娘を運ぶというものだった。イ号57は艦長も含め、全員がこの任務に反対だった。しかし、命令であるから出発した。美しい娘の乗艦に騒ぎ出す乗組員たち。一方、彼女は日本軍人を軽蔑していた。これには軍医(平田昭彦)も困ってしまう。彼らは無事、父娘を送り届けることが出来るのか? 日本の将来は彼らの肩にかかっている。


 イ-57の人たちには不思議な明るさがある。彼らは敵襲などいくつもの困難を乗り越えていく。潜水艦という閉鎖された空間の中で、苦労しつつも明るさを失っていないのが、魅力的なのだ。そして和平工作という戦争映画には珍しいテーマが面白い。一見、タイトルの「降伏せず」と和平工作とは全く相反する考え方だと思えるが、実際には彼らは命令だから従っているだけなのだ。
 この映画の「降伏せず」は映画「海底軍艦」で轟天建武隊が降伏しなかったこととは関係がない。なぜなら、轟天建武隊は戦後になって日本の降伏を知っても、なお降伏せずに戦争を継続していたからだ。


 松林宗恵の映画は「世界大戦争」「太平洋の嵐」のように脚本が素晴らしいものはいいが、「人間魚雷回天」「連合艦隊」のように脚本が糞だと話にならない。幸い、この映画は木村武のおかげで名作になったようだ。日本映画の脚本家で素晴らしいのは、黒澤映画で黒澤明小国英雄菊島隆三橋本忍がおり、特撮映画で関沢新一、木村武がいる。本多猪四郎監督も脚本には関わっていたと思われるので、この7名は記憶しておく価値がある。


 円谷英二の特撮は、相変わらず良い。この映画ではふんだんに実写が盛り込まれており、潜水艦燃えとリアリズムを両立させている。特に軍事ものはモノクロのほうが特撮に迫力が出る。そもそも映画はモノクロが基本だということは、全盛期の黒澤が最後までカラーを使わなかったことでも分かる。ただ、冒頭の「東宝スコープ」マークがモノクロというのは違和感を覚える。東宝マークはカラーじゃないとパッとしないのだ。
 團伊玖磨の音楽は合っていて良い。
 キャストはいつもの東宝映画と同じで、見ていて楽しい。池部良平田昭彦が英語を喋っているが、池部良立教大学英文科で、平田昭彦は東大法学部の出身なので、外人に通じるレベルなのかもしれない。いろいろ調べてみると、東宝の役者はインテリだったり士族出身(宝田明など)だったりするので面白い。この映画ではとりあえず平田昭彦が最高だった。この映画の一番の見所は「美女と平田昭彦」なのだ。

潜水艦イ-57降伏せず [DVD]

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