人権擁護法案マガジン・ブログ版

人権擁護法案マガジンのブログ版です。人権擁護法案反対VIP総司令部まとめサイトはこちら http://zinkenvip.fc2web.com/

世界大戦争(★★★★)

おすすめ度★★★★(5段階)
一言紹介:大東宝が庶民の視点で描き出す、悲劇の第三次世界大戦。悪夢の核戦争。
1961年、東宝製作。
監督:松林宗恵特技監督円谷英二、音楽:團伊玖磨
出演:フランキー堺宝田明、星由里子、乙羽信子笠智衆白川由美山村聰上原謙東野英治郎


 東宝が描き出す第三次世界大戦。人類は核戦争を回避し、生存することができるか!? そうそうたるキャストによる、極めてシリアスな作品であり、監督は「太平洋の嵐」など戦争映画で活躍した松林宗恵。音楽は同じく「太平洋の嵐」そして稲垣浩監督、三船敏郎主演の「無法松の一生」の團伊玖磨特技監督はご存知、円谷英二東宝特撮映画はほとんど本多猪四郎監督による作品であるが、彼以外の監督による(東宝特撮)映画では、唯一の名作と言っても過言ではない。むしろ戦争映画や文芸(?)として考えるべきか。


 ストーリー:連邦国と同盟国は緊張状態にあった。だが、幾たびの危機を何とか乗り越え、ようやく一時的な平和が訪れようとしていた。一方、東京に住む3人の子供の父、田村茂吉(主人公)の娘が、下宿人の高野と結婚しようとしていた。父・茂吉は結婚を認めてくれるのだろうか。人々は誰も戦争を望んでなどいなかった。ただただ、幸福に暮らそうとしていた。


 ドラマ(本編)と特撮、どちらも申し分ない。いや本当に素晴らしい。円谷英二の特技も、指折りの出来。飛行機、潜水艦、ミサイル基地、そして……。どれもCG以上の迫力だと私は思う。北極のシーンは後のサンダーバードを彷彿とさせる。ところで、大陸ではない北極に基地を建設することなどできるのか?
 一つだけ残念な点がある。それは最後に文字でメッセージを伝えていることだ。後に「ノストラダムスの大予言」でもこの手法が使われていたが、この映画では特に不要だ。それは何故か。メッセージは映画の中で十分に観客に伝わっており、くどいからである。物語からメッセージを伝えられなかったなら、駄作は決定であり、そうでないなら文字によるメッセージは不要。


 松林宗恵監督は坊さんだから、無常観ということを強調しているが、私には疑問だ。無情なら分かるが。これはむしろ幸福や生命に対する執着なのではないだろうか。無常だと言うなら、それこそ生命も、人類という種族も、文明も、滅びてしまって構わないということになりはしないか。色即是空を悟れば、核戦争など怖くないのかもしれない。だから仏教とは違うと思うのだが、それとも単に私の仏教理解が足りないだけか。


 「○○大戦争」は他に歴史戦争映画「明治天皇と日露大戦争」(新東宝)、SF映画「宇宙大戦争」「怪獣大戦争」(両方とも東宝)がある。この4つは全て名作だが、この「世界大戦争」は他の3つとは方向性がかなり異なる。
 そういえばこの映画は、東宝マークの前に「芸術祭参加作品」と出るが、さらにその前に2分くらい音楽が流れる。画面は黒いままだが故障ではないので慌てずに。


 核兵器は戦争を抑止する。しかし、もし誤って一発が発射されたら。あるいは、戦争が起きた時に、指導者が人命と法と人道を軽んじる者だったとしたら。もしくは戦闘用の小型の核爆弾だったら。核兵器は無くならない。そして核を使用する権限を、国民の代表のみならず、一部の国では独裁者が持っている。科学が進歩した結果、人類の命運は一部の人間の手に握られてしまった。あるいは、マルクスの言葉で疎外というものかもしれない。誰も望まないのに、勝手に戦争が起きる。そして勝手に核ミサイルが発射される。そういう事態もあるかもしれないのだ、社会法則の結果として。核兵器を作ったのが科学なら、社会法則を解明しコントロールするのも科学だ。反戦、反・核使用の意思と、学問の力こそが人類には必要なのだ。そして独裁国家がなくならないとしても、せめて国際法が遵守される平和な世の中が建設されねばならない。