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小室直樹の「痛快!憲法学」を読む 第1章

「痛快!憲法学」とは

 小室直樹の「痛快!憲法学」(2001年4月発売)は集英社の「痛快!」シリーズの一冊である*1小室直樹の最高傑作の一つと言えるだろう。「痛快!」シリーズは毎回、集英社の漫画から1作品が挿絵に使われているらしく、この本では「北斗の拳」が選ばれた。内容が「日本の憲法は既に死んでいる!」だから、ぴったりなのだ。
 現在、アマゾンでは「痛快!憲法学」は売り切れで、絶版だと思われる。その代わり、同じ内容で2006年3月に発売された「日本人のための憲法原論」がある。修正された箇所もあるかもしれないが、ほぼ全文、同じである。 続編として「日本国憲法の問題点」があり、私が初めて読んだ小室直樹の本がそれだった。次に読んだのが、この「痛快!憲法学」だ。「〜問題点」のほうもなかなか面白く、重要な内容だが、それでも「痛快〜」と比べるとスケールダウンしている。小室直樹の本で最初に読む一冊としては「痛快!憲法学」以外には考えられない。他に「悪の民主主義―民主主義原論」(97年11月)という本もあるが、「痛快!憲法学」や「日本国憲法の問題点」を読めば、特に読む必要がある本ではない。

日本人のための憲法原論

 繰り返すが、現在は「痛快!憲法学」は「日本人のための憲法原論」という新しいタイトルで発売されている*2。「痛快!憲法学」が気に入った人は、小室直樹の本をたくさん読んでほしい。小室直樹の本は読んでも飽きるということがない。どの本も素晴らしく、「痛快!憲法学」などは何度も読みたくなる。この本は「日本人のための憲法原論」だが、欧米人やアラブ人、中国人が読んでも勉強になる部分は多いだろう。

本来あるべき「憲法学」とは何か

本来の憲法学とは、憲法の条文解釈などではありません。「憲法を語る」とは、すなわち人類の歴史を語ることに他なりません。……憲法も民主主義も、けっして「人類普遍の原理」(日本国憲法前文)などではありません。(4、5P)

では民主主義という「原理」はどのようなものなのか。いかにして誕生したのか。「人類の歴史を語ること」で明らかになっていく。第1章「日本国憲法は死んでいる」えっ、死んでいるですって? 憲法は生き物だったのですか、小室先生。

改憲も護憲もあったもんじゃない

<シマジ やっぱり先生は憲法改正派でしょうなあ? この本で、どーんと過激な改憲論をぶちあげてください。そのほうが話題になって、うんと売れるというもんです。>(8P)

この本はシマジ君に対する小室先生の講義形式で書かれている。シマジ君とはこの本の編集者・島地勝彦のことだ。引用ではシマジ君の発言は<>で囲むこととする。彼に答えて子曰く「そんなことよりもずっと大切なことを」(8P)これから教えてくれるのだそうだ。まず第一に、ワイマール憲法という世界最先進の憲法がかつてドイツにあった。しかし、ヒットラーが首相になった後の1933年3月23日、全権委任法が制定され、立法権が行政府に委任されてしまった。その結果、ワイマール憲法は廃止されたのでもないのに、死んでしまったのだ。

憲法は成文法ではなく、本質的には慣習法である(10P)

明文化されていても慣習になっていなければ、それは国際法として成立しない。これと同様に、慣習として機能していない憲法は死んでいる。この本では、

「はたして日本国憲法は生きているのか、死んでいるのか」が議論の中心になります。……
<シマジ ……先生は結局「日本国憲法は死んでいる」とお考えのように思えてならないんですが。>
そのとおり!……もはや現代日本に民主主義もなければ、それどころか資本主義もない。日本国には憲法はない!(17P)

死んでいる憲法を改正しても無意味だから、「護憲も改憲もあったものではありません」(17P)というわけだ。では、どうしたらいいのか? 我々は生きた憲法を手にすることは出来ないのか? 次回へ続く。

*1:「痛快!」シリーズをアマゾンで検索したところ、売れ筋は「痛快!寂聴仏教塾」「痛快!ローマ学」「痛快!経済学」などだった。また最新刊は2004年11月発売の「痛快!経済学2」だった。

*2:他に「原論」を挙げると、「日本人のための経済原論」「日本人のための宗教原論」「日本人のためのイスラム原論」「小室直樹の資本主義原論」「小室直樹の中国原論」「民主主義原論」「数学原論」というように、「日本人のための」か「小室直樹の」が頭についている本が多い。内容は憲法、政治、経済、宗教、数学など様々だが、小室直樹読者には自然なことだ。数学=論理学が学問の基礎となり、宗教が法、政治、経済の基盤となり、憲法が政治、経済を規定しているのだから。