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現代語抄訳 二宮翁夜話(二宮尊徳、福住正兄、渡辺毅)

明治になって弟子の福住正兄がまとめた、二宮金次郎(尊徳)さんの言行録。例え話がうまく、百姓にも分かるように説明している。この本に載っている話の数は、ざっと数えると105話で、抄訳といっても全体の4割ほどだ。なお、金次郎さんの思想は「報徳思想」「報徳教」「以徳報徳」などと呼ばれる。

日本資本主義の精神

山本七平「日本資本主義の精神」では、あまり登場しなかったが、上杉鷹山と並ぶ日本資本主義の代表者であると思う。そのエッセンスは、以下のようなものである。

  • 一生懸命に働け。
  • 儲けようと思うな、金は真面目に働けば勝手に貯まる。
  • 買うほうも売るほうも喜ぶ、貸すほうも借りるほうも喜ぶ、それが道だ。
  • 最初から何も持っていないと思っていれば、万事が儲け。
  • 自然を大切にする。物を大切にする。感謝の気持ちを忘れない。
  • 人は天命をわきまえ、天命に安んじ、我を取り去り一心を定めて動かないことを尊いことだとするのである。(101P)……特にこれは、キリスト教の天職とほとんど同じ考え方に思える。
  • 分度と推譲……お湯を寄せようとしても向こうへ行き、押すとこちらへ来る。分度を守って余った分を推譲する。「情けは人のためならず」譲る相手は他人だけではない。将来の自分や子孫にも譲れ。譲るものは金だけではなく、道(道路)、言葉、功績、なんでも当てはまる。「推譲」は投資に繋がる考え方で、資本主義においてきわめて重要。


また、農村経営については「代表的日本人」などを読むとよく分かる。

それ以外の倫理

  • 天理と人道……人道とは、人間が定めたものであって、努力しなければなくなってしまうものである。例えば私欲は天理であり、人間は心の田畑に生えた私欲という雑草を取り、米を作らねばならない。農業は人道であるが、天理に従って春に苗を植え、秋に収穫する。
  • 積小為大(小を積んで大と為す)。類語:塵も積もれば山と成る。千里の道も一歩から。ローマは一日にして成らず。
  • 草取りは草の少ない所からやれ(簡単なことから手をつけよ)。
  • 仇討ちをはじめ復讐は全てよくないことである。処罰は政府に任せるべきだ。なぜなら復讐は、さらなる復讐を招くだけだからである。
  • 神道は、まず日本がはじまって以来の「はじまり」の大道であり、皇国の根源の道である。……たとえば、嫁がないときに夫婦喧嘩はない。……「古道に つもる木の葉を かきわけて 天照す神の 足跡を見ん」と詠んだ。(86ページ)


江戸の町は当時二百万を超える世界最大の人口を擁する都市であったにもかかわらず、同心(当時の警察官)は二十人そこそこの人員で足りていたという驚異的な治安のよさを実現させていた。(3P,渡辺毅によるまえがき)

過去のメルマガの記事を転載

尊徳(徳を尊ぶ)、以徳報徳(徳を以って徳に報いる)というように、二宮金次郎は「徳」の人です。「徳」とは何かと言うと、「めぐみ。恩恵。神仏などの加護」(大辞泉)です。以徳報徳とは、恩恵を施すことで恩恵に報いるということでしょう。それでは誰による恩恵に報いるのかと言えば、お天道さんなど大自然や、親しい人々、世間の人々からの恩恵だと思います。生んでくれた御恩、食べさせてくれる御恩など、あらゆる恩恵を人は受けています。それに対して恩恵を施して報いるのです。これは単なる道徳や宗教ではなく、実は一種の経済学なんです。「情けは人の為ならず」と言うように、以徳報徳は人間を栄えさせてくれます。この思想は神道、仏教、儒教などをいいところだけ採って、その上に二宮翁の経験からくる考えを融合させています。それを百姓にも分かるように説明しているので、とても面白いのです。戦前、多くの小学校に銅像が建ち、手本は二宮金次郎ということになりました。この人こそ日本を代表する資本主義者であるのです。「古道につもる木の葉をかきわけて 天照す神の足跡を見ん」


麻生外務大臣演説 ODA・情けは他人のためならず 平成18年1月19日
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/enzetsu/18/easo_0119.html
旧約聖書によれば、労働とは、アダムとイブが神との約束を破った罰として与えられたものといいます。ところが古事記には、天照大神が機織小屋から出てみれば、神々は高天原で働いていたと書いてある。神々が働くくらいですから、日本の神話によれば労働とは当然のこととして、善をなす行いであるわけです。


機織小屋から出てみれば、とありますけれど、天照大神ご自身が機織なさっているそうです。労働は尊いことであり、正当に稼いだ富は正しいのです。天照す神の足跡を見れば、明日の日本の進むべき古道も分かるでしょう。


天理と人道とか、分度と推譲とか、積小為大とかいう話が印象的でした。私もそのうち2回、3回と読み返すつもりです。その他、二宮尊徳翁について知るには代表的日本人(内村鑑三)や、精撰尋常小学修身書(八木秀次監修)がおすすめです。