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読売新聞の新たな社説

人権法案 現行制度の改善の方が先だ(5月31日付・読売社説)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20080530-OYT1T00863.htm

 人権擁護法案の装いを変え、なお今国会提出を目指す動きが自民党内にある。会期末を控え、党内すら議論を二分する法案を出すことには、多大な疑問がある。断念すべきだ。
 自民党の人権問題等調査会で会長私案が示された。反対派に配慮し、地域の人権問題に携わる人権擁護委員は日本国民に限られ、報道を規制する条項を外した。
 「あいまいだ」と批判の強かった人権侵害の定義を明示する代わりに、人権侵害に該当する例をいくつか挙げた。
 だが、大きな論点だった侵害の有無を判断する「人権委員会」の位置づけや権限は、不明確だ。
 従来の法案では、法務省の外局とし、裁判所の令状なく立ち入り調査できる権限を与えていた。
 人権侵害を起こしてきた刑務所や入管施設を束ねる法務省の外局では、独立性に疑問がある。
 しかも、私案で示された人権侵害の例には、「反復して行う差別的言動」「差別的取り扱いを誘発する差別助長行為」など、どういう行為を想定しているのか不明瞭(めいりょう)なものが掲げられている。
 拡大解釈可能な例示を基に、人権委の立ち入り調査権が残るとすれば、依然危険性が大きい。
 国連規約人権委員会の勧告に端を発した法案作りは、本来は公権力の逸脱を防止するためだ。例示には「公務員が行う虐待」も含まれてはいるが、他のあいまいな例と同列に並べられている。
 名古屋刑務所の刑務官による集団暴行事件を受け、収容者の不服申し立て制度が設けられた。
 だが、審査するのは“身内”の矯正管区長と法相だ。法相が「問題なし」と判断しようとする時だけ、法務省の別の部署に事務局を置く第三者の調査検討会が調べる。こうした仕組みこそ、実効性を持つよう改善すべきだ。
 警察でも、冤罪(えんざい)と判明した鹿児島県の選挙違反事件や富山県の婦女暴行事件をはじめ、取り調べなどをめぐる不祥事は絶えない。
 警察当局は取り調べ監督制度の導入などを打ち出しているが、こうした制度を定着させ、人権侵害を防ぐことが求められる。
 司法制度改革の一環として創設・機能充実が図られた日本司法支援センター(法テラス)や裁判外紛争解決手続き(ADR)も、もっと有効に生かすべきだ。
 現行制度を改善・強化し、不足を補う。ならば、個別の問題に対処する法律の改正が先だ。それが実効性のある人権侵害防止の仕組み作りの基本ではないか。