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伊福部昭 映画音楽の世界

 伊福部昭音楽祭の会場で販売され、同時に「東宝ミュージック」ウェブサイトでも発売開始された、伊福部映画音楽のベスト盤。伊福部ベストであるのみならず、日本映画の縮図となっているあたり、さすがである。ジャケットなども音楽祭とおそろいで、帯の裏には伊福部さんが書いた「大楽必易」の書があり、嬉しい(ただし音楽祭のパンフにも同じものが出ている)。
 選曲は伊福部さんが生前に指定したものを基本としているというが、どうやら映画のタイトルの指定など大雑把なものとも思える。メインタイトル(スタッフロール)を中心に収録されている。同じメロディの曲は収録しない方針となったため、ビルマの竪琴はあるがゴジラの「帝都の惨状」は無い、という感じになった。
 セクションは「初期作品」「時代劇」「社会派」「怪獣」「SF」「記録映画」「史劇」「文芸」「伝記」「スペクタクル」「人間ドラマ」「晩年作品」となっているようだ。

曲目解説(1枚目)

初期作品

  1. 銀嶺の果て・メインタイトル……映画については音楽祭の記事で触れた。このCDにはスキー音楽は無い。メインタイトルはラドン追撃せよの原型。
  2. ジャコ萬と鉄・メインタイトル……音楽も歌も不気味で、夜に聴くと怖そうだ。「ジャコ萬」「鉄」は人名。監督、脚本は「銀嶺の果て」と同じく谷口・黒澤。主演は三船敏郎。猟師の映画である。
  3. ジャコ萬と鉄・網下し
  4. 原爆の子・メインタイトル……ゴジラと同じく、原爆をテーマにした映画で、音楽も似た悲しい曲になっている。反核は「反・核所有(武装)」ではなく「反・核使用(国際法及び人道の無視)」でなければならぬ、というのが私の持論となっているが、その思いを強くする悲しい音楽だ。
  5. アナタハン・メインタイトル……スタンバーグという音楽にうるさい監督の映画で、音楽が無いのはわずか3分だけらしい。わけのわからない曲。ストーリーはアナタハン島で数十人の男たちが一人の女を取り合うというもの。有名なアナタハン事件の映画化である。
  6. ゴジラ・タイトルテーマ……M16。メインタイトルではなく、劇中のテイクでテンポ早め(同じ曲だが)。自衛隊がんばれ!

時代劇

  1. 柳生武芸帳・タイトルテーマ……江戸時代の話(時代劇)。監督は稲垣浩、主演は三船敏郎。ここまでで既に3作も三船敏郎主演作があることに驚く。
  2. 柳生武芸帳・エンディング
  3. 柳生武芸帳双龍秘剱・救出……翌年公開の続編。伊福部さんと三船は会うと声をかける程度には親しかったようだ。
  4. 柳生武芸帳双龍秘剱・柳生道場
  5. 宮本武蔵・千年杉と武蔵……三船敏郎主演の東宝映画(三部作・音楽は團伊玖磨)ではなく、東映中村錦之助・主演。5部作らしいが、伊福部さんは1作目のみ担当とのこと。
  6. 反逆児・メインタイトル……戦国時代の話。この曲は耳に心地よい歌である。能?のような掛け声や打楽器も聞こえる。
  7. 座頭市物語・メインタイトル……座頭市シリーズは好きではないが、この曲は気に入っている。特に琵琶がいい。第1作をはじめ、最もヒットした「座頭市と用心棒」など、ほとんどの座頭市シリーズが伊福部さんによる音楽。
  8. 座頭市血笑旅・エンディング……シリーズ8作目。
  9. 眠狂四郎多情剣・メインタイトル……シリーズ7作目。能だが、フランケンシュタインのテーマもちらりと聴こえる。こちらのほうが後か。時代劇は黒澤監督作品が好きなので、このセクションはあまり馴染みがない。早坂文雄、佐藤勝も優れた作曲家だ。ちなみに、唯一の伊福部音楽・黒澤映画である「静かなる決闘」はこのCDにはない。

社会派

  1. コタンの口笛・タイトルテーマ……成瀬巳喜男監督、アイヌ人の話。
  2. コタンの口笛・コタンのテーマ……寂しげなピアノ曲
  3. 帝銀事件 死刑囚・犯行……現在の三井住友銀行で起きた事件。犯人の平沢は死刑判決が出されたが代々の法務大臣が署名せず、獄中で病死。本当に犯人かどうか疑わしいという。その実話の映画化だが、なんと伊福部さんの友人が平沢の隣に住んでおり、伊福部さんと平沢には面識があったという。これは銀行員16名に毒(青酸カリ?)を飲ませるシーンの曲。おぞましい感じはしない。
  4. 日本列島・メインタイトル……ギターで始まり、オーケストラが途中で入ってくる。内容は米軍占領下の日本で起きた犯罪など。この時代の記録フィルムは「皇室と戦争とわが民族」でも見ることができる。
  5. 日本列島・デモ
  6. 一万三千人の容疑者・自白……実際にあった吉展ちゃん誘拐殺人事件の映画化。黒澤明の「天国と地獄」が既にあり、その公開直後の事件だった。犯人は死刑となった。

怪獣

  1. 空の大怪獣ラドン・追撃……M10。ゴジラに続く怪獣映画2作目で、非常にシリアスな作品。短い曲で前半は「ラドン追撃せよ」後半は「SF交響ファンタジー第2番」の終わりのほうに出てくるメロディだ。
  2. 空の大怪獣ラドンラドン誕生……M14。初代ラドンのテーマ。メインタイトルと同じ曲だが、こちらは短い。
  3. 大怪獣バラン・メインタイトル……イントロは後に2代目ラドンのテーマとなる。合唱曲。バラダギ、バラダギ。
  4. 宇宙大怪獣ドゴラ・ドゴラのテーマ……M16。怪獣というより怪奇現象のような曲。
  5. キングコング対ゴジラゴジラの恐怖……M10。この曲はステレオ。ゴジラのテーマは対ゴジラマーチの他はこの曲のみ収録。
  6. モスラ対ゴジラモスラの旅立ち……M18。終わりはマハラモスラのメロディ。伊福部さんが言うには、「聖なる泉」も「マハラモスラ」も、誰かがつけた曲名とのこと。
  7. フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ・マーチ……M12。L作戦準備、あるいはメーサーマーチ。この曲の一部は既に「わんぱく王子の大蛇退治」でも使われていた。

SF

  1. 地球防衛軍・マーチ……M17。最もテンポの早いバージョンで、マーカライトファープの猛攻撃シーンの曲。
  2. 宇宙大戦争・メインタイトル……タイトルマーチ。宇宙大戦争マーチは収録されなかった。伊福部さん曰く、マーチの音量が小さいのは私にはどうでもいいことだが、演奏者に申し訳ない。金管の人には「伊福部さんの曲はギャラを2倍にしてほしいくらい」と言われたんだそうだ。酸欠で脳震盪を起こした人もいるんだとか。確かに、もっと大きな音量で鳴らしてほしかった。映画編集スタッフはそこが分かってない。
  3. 海底軍艦・試運転1……M16。ゆっくりなテンポだが、そこがカッコいいのだ。金管が響く。後半はいつもの海底軍艦マーチとは別の曲。
  4. 海底軍艦・試運転2……M17。映画の中では最もテンポが早い海底軍艦マーチかもしれない。詳細は未確認。
  5. 緯度0大作戦・メインタイトル……映画は「とほほ」だが、この曲は本当に美しい名曲だ。
  6. 怪獣大戦争・マーチ……M23。怪獣ではなくSFカテゴリに入れてあるあたり、さすがだ。この映画は単なる怪獣映画ではなく、立派にSFなのである。
  7. 怪獣総進撃・メインタイトル……M1。本当はアバンタイトルというんじゃないだろうか。
  8. 怪獣総進撃・マーチ……M2。マーチだが、メインタイトルはこっちじゃなかろうか。イントロのドラム音がポイント。

記録映画

  1. 佐久間ダム 第二部 変貌する大天竜・掘削機……当時、日本最大、世界7位の佐久間ダムの建設記録映画三部作の曲だが、まるで「佐久間ダム建設用ロボット・メカニコングの作業中に突如、天竜ゴジラ)が出現。ゴジラvsメカニコング」みたいだ。メカニコングはモゲラと同じく戦闘用ではなく、エレメントX発掘用に作られたはず。あるいは戦闘もできる設計だったかもしれないが。どうせなら金原明善も絡めてみたいくらいだ。
  2. 佐久間ダム 第三部・工事進捗……今度は完成後?の水力発電所の作業中の曲らしい。聴き覚えがあるような気のする曲だが、とにかく元気の出る曲で、ダム完成当時が偲ばれる。この三部作は足掛け3年で制作されたという。
  3. 三菱未来館・日本の四季……大阪万博で最も人気のあった企業パブリオンは三菱未来館で、製作・田中友幸、特技・円谷英二、音楽・伊福部昭だった。そこで最初に流れる曲。
  4. 三菱未来館・海……未来の海底都市らしい。途中のメロディが海底軍艦M16の後半に似ている。三菱未来館の「火山」がゴジラガイガンのメインタイトルに勝手に流用されてしまった。このCDには未収録だが。他に「嵐」も使われている。全ての曲が「伊福部昭 映画音楽 東映動画篇」に「わんぱく王子の大蛇退治」と一緒に収録されたが、それを見ると11曲あるようだ。ガイガンと合わせればこれで11分の4が聴けたことになる。