人権擁護法案マガジン・ブログ版

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神話について

11月25日の「続・神話の本」もあわせてご覧ください。
http://d.hatena.ne.jp/jinkenvip/20061125/1164451183
以下、人権擁護法案マガジン第179号(8月17日発行)を加筆・修正。


神話学者ジョルジュ・デュメジルは言った。「神話をなくした民族は命をなくす」

日本神話 日本人の心のルーツが見えてくる! 雑学3分間ビジュアル図解シリーズ(吉田敦彦)

日本の神話と非常によく似た神話が、ギリシャ高句麗、南太平洋、アメリカインディアンの神話に見つかります。それだけでもなかなか興味深いことですが、さらに世界の神話と比較すると、日本の神話には重大な特徴があると分かるのです。それは天照大神に象徴される、生命尊重、平和主義の考え方です。天照大神は、素戔嗚尊スサノオのみこと)が悪戯を繰り返しても、罰するどころか率先しておかばいになりました。しかし、素戔嗚尊の悪戯により、遂に死人が(いや死神か)出ると、大変お怒りになりました。しかし、尊を罰するのではなく、ご自分が岩屋にお篭りになるのでした。この他にも、保食神ウケモチのかみ)が月読命ツクヨミのみこと)により殺された時、天照大神は「弟といえどもそういうことをする人は嫌いです」ともう月読命とはお会いになることはないと仰りました。それ以来、太陽と月は昼と夜に別々に出るようになったのです。(しかし昼間に月が出ている日もあるが……。)とにかく、これらのことから、天照大神が生命を大切になさることが分かります。この他に天照大神の特徴として、
1、最高神が女神なのは珍しい。
2、外国の神話では、強い力を持つ女神は性欲が旺盛なのだが、天照大神は永遠に処女であるらしいこと。
3、父親たちから平和的に、祝福されて天の王となったこと。
があります。この女神様が日本の最高神であることは、日本人の精神に大きな影響を与えてきたでしょうから、今後の研究が期待されます。この本では、試みに神話の心理学的分析も行なわれています。賛否両論あると思いますが、興味深い本であることは確かです。神話を知らない人にも分かるように書かれていますよ。(注意:月読命は上記のとおり男神です。私は以前女神だと勘違いしてました。)

ビギナーズ・クラシックス 古事記角川書店

この「ビギナーズ・クラシックス」シリーズは当たり外れがありますが、古事記はそこそこです。初めて神話に触れる人でもよく理解できるでしょう。さらっと古事記を知りたい人にはおすすめします。

古事記夜話(中村武彦)

ビギナーズ・クラシックスよりもずっと詳しい本ですが、同じくらいさらっと読める夜話です。両方読むのはどうかと思いますので、どちらかというとこちらのほうがおすすめです。

教科書が教えない神武天皇出雲井晶

一冊全て神武天皇について書かれた本というのは、貴重です。神武天皇の東征が中心になっており、かなり詳しく書かれています。この著者は神話以外では「昭和天皇 ご生誕100年記念」という本があり、そちらも非常に感動的な内容でした。この2冊は小学生でも可、だと思います。

物語日本史(平泉澄

神話の後、日本の歴史はどのように展開していったのか。この本では神代から人代へと移っていくところで、違和感がなく、途切れることなく大東亜戦争まで書かれています。以上、ご紹介した5冊は初めて神話を読む人でも安心です。

歪められた日本神話(萩野貞樹)

神話学に関する本です。神話は神話だ、という主張には、頷かざるを得ません。しかし戦後日本では、日本神話は神話ではないという主張が一般的です。


外国の神話学者や民族学者で日本の古典神話を「神話」ではなく政治文書だなどと言う人はいない。(91P)


ソクラテスの言葉「いや、たしかに、もしぼくが賢い人たちがしているようにそんな俗説(神話のこと)は信じないといえば、当節の風潮に合うことになるだろうね」(104P)


反神話的な態度というのは、要するに科学的な研究を妨げる「伝統的な」態度にほかならなかったのだ。(82P)


さて神話に関しては、「合理的理解こそが非科学だ」というちょっと興味深い逆説が正しく成り立つ(83P、つまり神話学における合理とは何か、ということ。)


日本こそ太古以来の神話が現に生きて働き、人々が「神話を生きている」という世界でたった一つの文明国であるからである。(84P、現に生きて働きとは、皇室・神社・お祭りなどのこと)


神話的思考・感覚と言えばそれは「はるかなるもの」を思いやる心であり、畏れであり謹みであり、同じ歴史に連なる者としての豊かな共感ということ。(87P)


この本には書いてなかったかもしれませんが、小泉八雲ラフカディオ・ハーン)は我が国のことを「神代そのままの国」と言っています。

神話は政治文書か?

Japan on the Globe 国際派日本人養成講座
神話は大和朝廷が自らの政治権力を正当化するための「政治宣伝文書」か?
http://www.melma.com/backnumber_115_1126648/

物語日本史より

平泉澄「物語日本史・上」より)
 神話を、そのままの姿で、今日の知識から批判すれば、どれもこれも荒唐無稽、つまりデタラメで、信用も出来ず、価値も無いように思われるでしょうが、実はその中に、古代の宗教、哲学、歴史、道徳、風俗、習慣が、その影をうつしているのであって、その民族の世界観と人生観、その知性と徳性とを、これによってうかがう事が出来る、貴重な資料なのです。
 ……さてこの神話の特色として注意すべき事の一つは、日本の島々が、人と同じく、神の生み給うたものとされている点です。つまり我々の先祖は、この国土山河を、我々とは別のものとは見ず、等しく神によって作られたものであって、いわば血が続いているように考え、極めて親しい気持ちで対していたのです。かように山河自然に対し、動植物に対して、あたたかい感情をいだいた事は、日本人の国民性を、美しくやさしく育ててゆく上に、大きな関係があったと思われます。
 今一つの特色は、悲惨とか、冷酷とか、凶悪とか、いうような暗い話が少なくて、大体ほがらかな、愉快な物語が多い事です。前にも述べた事ですが、余所の神話では、人間の発生が怪獣から出たとしたりまた罪悪から人が生まれたとしたり、あるいは惨殺、姦淫など、猥がましい話が多いのに、我が国には、そのような暗い話は少なく、大国主命と稲羽の白兎にしても、彦火火出見尊と赤鯛にしても、まことに面白く、楽しい話が多いのです。
 ……神話をそのまま歴史的事実とは思われませんが、このように考える時、深い意味があると思われます。