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日本の名著31 吉田松陰(中公バックス、松本三之介:責任編集)

 「講孟余話ほか」(吉田松陰、中公クラシックス)と同じ内容に、加えて武教全書講録、異賊防禦の策、要駕策主意などが現代語訳されて収録されている。他に書簡もたくさん載っているが、原文のままである。
 どちらも同じ会社であり、この本のほうが古いから、「日本の名著31」を少し削って再発売したのが「講孟余話ほか」であろう。もしこの本が簡単に入手できるなら、「講孟余話ほか」を読むよりこちらを読んだほうがいいだろう。しかし、無理をして手に入れるほどでもない。どちらでも可。

武教全書講録

 山鹿素行の武教全書(実際はほとんど武教小学の内容)の講義録である。この講義が元となって松下村塾が生まれた。もともと松陰先生は山鹿流師範であったから、いろいろ考えてみると、非常に重要な文章に思える。

身体はすべて父母から授かったものである。その身体を傷つけないことが孝の始まりである。立身出世し、道義を行い、名を後世に残し、もって父母を顕すのが、孝の到達点である。(146P)

倹約は義を主とし、公共のためにすることである。自分が身に受けた衣食や財器を倹約し、貯蓄をしておいて、主君の用に提供し、朋友の難儀を救い、身分の賤しい人々の貧困を救うのである。吝嗇は利を主とし、私のためにすることである。(163P)

二宮尊徳福沢諭吉も同様の意見を言っている。

私はおろかであるが、聖賢の心を保存してうけつぎ忠孝の志を立て、国威を発展させ外国を滅ぼすことをもって、自分の任務としている。かならずや後の人をして、この私の行為を知ることによって興起させ、七生ののちまで影響を与えたいものだ。(177P)

松陰先生は、たいてい謙遜の言葉を述べた後に、大言壮語のような言葉を並べる。しかし、松陰先生の場合は大言壮語ではなかった。まさしく有言実行、「七生ののちまで影響を与え」ている。また謙遜の言葉も嫌味たらしくなく、このような人でなければ本当の教師ではないと思う。

異賊防禦の策

 タイトルの通り、外国の侵略から我が国を防衛する策について論じている。

要駕策主意

 松陰先生は長州藩主を京都に入れようとし、参勤交代の途中で伏見にいるとき、駕(かご)に迫って説得するという計画を立てた。結局、実行できないに等しいまま失敗に終わった。弟子たちのほとんどは、この計画に反対であり、参加しなかった。
 この時期、松陰先生は傷心で、非常に過激なことも言っているし、大多数の弟子に失望した、あるいはむしろ松陰先生のほうが弟子たちに見放されてしまった。この文章を読むと、松陰先生も一個の人間であったと気づかされる。しかし、先生の偉大さは少しも揺るがない。それよりも、弟子たちが自分の考えを師の考えよりも重視していたことが分かる。これによって、彼らの勤皇の志が師に洗脳されたものではなく、自分の頭脳で判断して導き出した信念であることが分かるのだ。要駕策に関しては松陰先生の気持ちも、弟子の気持ちも、分かる気がする。皇国の危機に、ただ座してはおれない、しかし急いては事を仕損じるだけ。矢も盾もたまらない。