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まあだだよ(★)


おすすめ度★(5段階)
一言紹介:黒澤明本多猪四郎、最後の映画。二人の最期の「まあだだよ」の声が響き渡る。
1993年、大映製作。
監督・脚本:黒澤明、演出補佐:本多猪四郎、音楽:池辺晋一郎、原作:内田百けん
出演:松村達雄香川京子、井川比佐志、所ジョージほか。


 老先生と生徒たち(中年親父)の交流を描いた作品だが、あの先生と生徒がどのような学園生活を送り、どうしてこんなに仲良くなったのか、その背景が描かれていないため、確かに先生は善人だが、老人と中年親父が宴会をしているところだけ見せられても困る。あるいは戦前の教育を受けた人には、説明不要ということか。
 この映画に限らず、カラー時代の黒澤映画は脚本に恵まれていれば、もっと面白くなったはず(黒澤監督が一人で書いたせいか、どれもいまいち)。正直、「もういいよ」という映画ばかりに思える。晩年の作品は、どれも黒澤明の映画という感じではない。狙ってやったのなら凄いが、どちらにしても黒澤映画を見ようと思って見ると、期待外れに終わる。別にアクションが見たいのではない。ただ、「生きる」「野良犬」「醜聞」くらいのエネルギーが感じられたらよかった。
 この映画の唯一の見所は、香川京子の美しさではないだろうか。
 もしかすると、黒澤明はかつての黒澤組の人たちに「摩阿陀会」を開いてほしかったのかもしれない。これが映画ではなく黒澤明の日記や遺書の類だったなら、私は泣いただろう。黒澤にとって、本当の友達とは一緒に映画を作る仲間だったのではないだろうか。そして晩年は、本多監督のような友達、あるいは古くからの黒澤組の仲間もいたけれども、三船敏郎志村喬、土屋嘉男、あるいは音楽の佐藤勝といった人々とは、別れてしまった。彼らとまた一緒に映画を作りたかった。いや、映画は作らなくても、ただ一緒に宴会がしたかった、そんな思いが込められているとしたら、映画にではなく監督の思いに泣ける。ネット上でいろいろな人の感想を見ていると、昔の黒澤組の宴会が、この映画に反映されているという意見を見つけた。そういえば、本多組もよく宴会をやったと聞く。黒澤明本多猪四郎、日本映画全盛期の、日本映画を代表する二人の監督の、最も楽しかった時代の記憶、それがこの映画なのだろうか。
 なんにしても、この映画は面白くない。そして、この映画は日本映画というものの葬式に思えてならない。日本映画は死にましたか? 「まあだだよ」 でも、これを最後に二人は亡くなり、「もういいよ」になってしまったのだ。
 「日本人はとても素敵だった」という本だったか、それを読むと戦前の日本の師弟関係がよく分かる。この映画を見る前に読んでおくと、時代の雰囲気がつかめると思う。まあ、あの本は台湾の話だが、台湾は日本だったのだから。