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八月の狂詩曲(★)

http://youtube.com/watch?v=roxp-YA4OAI
予告編


おすすめ度★(5段階)
一言紹介:心暖まる映画かと思ったら、「生きものの記録」のような寒い映画だった。
1991年、松竹製作。
監督:黒澤明、演出補佐:本多猪四郎、音楽:池辺晋一郎、脚本:黒澤明、原作:村田喜代子「鍋の中」。
出演:リチャード・ギアほか。


 黒澤明反核映画を撮らせると酷いことになる、というのは「生きものの記録」で分かっていたことだが、それが「夢」の8つの短編のうちの2つで復活し、さらにその次の「八月の狂詩曲」で完全復活した。「反核!半角!」という感じで見ていて辛い。いっそ黒澤・本多の二人でゴジラのリメイクでもすればよかったんだ。
 ということで、確かにこれは黒澤明の映画である(悪い意味で)。しかもエネルギーは「生きものの記録」より遥かに後退している。それもそのはず、あの映画は三船敏郎を主役に東宝の名俳優がずらり。音楽は早坂文雄の遺作を佐藤勝が引き継いだ。つまり、画面の密度自体は全盛期の黒澤そのもので、さすがと言うほかない。しかしこの「八月の狂詩曲」は、そんなエネルギーは全く持っていないにも関わらず、黒澤明の負の面が全開になってしまった。面白いわけがない。もっとも、「どですかでん」から(カラー時代は)一つとして名作がないのだが。はっきり言って、黒澤明の真の「遺作」は「赤ひげ」である。
 映画にはテレビドラマとは違う魅力がなければ価値がない。この映画はテレビドラマ以下だ。ただ、黒澤映画としては久しぶりに1時間30分という短さで、気軽に見ることが出来る。リチャード・ギアの日本語達者ぶりに感心した。
http://www.nishinippon.co.jp/news/2005/perikan/008.html

村田(原作者)
黒澤明シナリオ全集っていうのを持っていて、暗記できるくらいだった。「三四郎」とか「酔いどれ天使」とか。でもそれと「八月―」はレベルが違っていた。ただ映画を見たとき、やはり黒澤監督の映像はすごいと思った。大雨の中でシーツを取り込むシーンで、原爆の強烈なイメージをよく描いているなと。でも、ああいうふうに原爆反対みたいな映画になってしまうとつまらないですね。

原作は芥川賞を受賞しているので、おそらくこの映画よりも面白いはず(読んだことない)。

……変に芸術家気取りで難解なものをつくったりする傾向もあったんです。だけど、本当にいい映画というのはおもしろいものなんだな。……実にわかりやすくおもしろく、その中でジワーッと何かを語りかけてくるものじゃなきゃいけない。……職人を突き抜けて芸術家になるんであって、職人でない芸術家なんてないんだ、と。……それと同時に、例えば暗い話ばっかり延々と見せられても、お客はたまんないんですよ。昔よく言ってたコメディ・リリーフという、適当におもしろいところをはさんでおもしろく見せていかなきゃいけないわけでしょ。(黒沢明「夢は天才である」51、52P)

「夢」は芸術家気取りで、この映画は別にそうではないが、どちらも面白くない。「まあだだよ」もそうだ。全然語りかけてこない。いや独り言を聞かされている気分なのだ。職人としての腕が落ちたのか? ちなみに、「本当にいい映画というのはおもしろいものなんだ」と似たようなことを本多猪四郎も語っていた。彼の映画も、その多くは「実にわかりやすくおもしろく、その中でジワーッと何かを語りかけてくる」「適当におもしろいところをはさんでおもしろく見せてい」くというものだった。もちろん黒澤同様、本多監督の映画も全てが面白いわけではない。先日、久しぶりにスターウォーズ三部作を見て、「これより20年くらい前には、日本にも黒澤明本多猪四郎の映画があって、スターウォーズと同じか、それ以上に面白かったんだがなあ」と思った。