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小室直樹の「痛快!憲法学」を読む 第12章後編

戦後唯一のデモクラット

 議会政治で重要なことは、討論・演説です。そして、それを通じて予算・法律を作ることです。しかるに現在日本の政治は、討論・演説なんて、ありゃしない。国会中継なんて誰も見ないし、ましてや演説が本になるなんて、想像すらできない。予算・法律も政府が作るだけで、議会は何もしない。政治家は官僚の操り人形(傀儡)になっているわけです。しかし、例外が戦後にもいた。

彼が昭和20年代、まだまだ新米議員であったときに作った法律はなんと26件。(244P)

8年で26個の法案を成立させた国会議員、彼の名は田中角栄。討論・演説がうまく、次々と議員立法をしていく。

サッチャー元首相は、その回顧録で「民主主義の眼目は、率直で力を込めた討論である」と記していますが、イギリスの名政治家、大政治家は例外なく雄弁家だった。ディズレーリしかし、チャーチルしかり、サッチャーしかりです。戦後日本において、その伝統を体現したのは角栄ただ一人であった。(245P)

演説や議論の大切さは、かの「学問のすすめ」でも強調されています。デモクラシー最後の砦たる議会、そこにおいて最も重要なことは、討論・演説を通して予算・法律を作ることです。よって良き政治家たる条件は、演説がうまいこと。もちろんそれだけでは十分とは言えませんが、第一の条件です。安倍総理は……?

日本で議員立法がほとんどない理由

 アメリカでは、新しく制定された法律と、それまでの法律とが矛盾する場合、立法に於いてはそれを気にせず、裁判所がどうするか決定します。しかし日本の場合は、矛盾する法律を制定することはできず、国会で廃案になるというのです。そのため、現行法に関する膨大な知識がないと立法ができません。さらに、日本の政治家には立法をする有能な家来がいません。しかし角栄は違いました。彼は官僚を自由自在に操り、議員立法をしていったのです。

ロッキード裁判は暗黒裁判だった

 いろいろあって角栄は逮捕され、ロッキード事件の裁判は始まりました。その時、証拠がないことに焦った検察は、何と刑事訴訟法に認められていない刑事免責(証言する代わりに、証言者の罪を見逃す)によって証人を呼んだのです(実際は調書の提出)。しかも裁判所は検察の味方をし、マスコミも裁判所と検察を応援しました。デュー・プロセスの完全無視! これを暗黒裁判と呼ばずして、何を暗黒裁判と呼ぶか。
 さらに、今度は憲法の蹂躙です。

日本国憲法 第37条 2 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。

この証言に対して、被告側の反対尋問が認められなかったのです。

最高裁は「コーチャン証言には適法性がなかった」旨のことを述べた。つまり最高裁だって、コーチャン証言は憲法違反だということがわかっていたというわけです。(250P)

検察、裁判所、マスコミが一体となって暗黒裁判を執行し、判決が出る前に角栄は死にました。

憲法は慣習法である

 憲法は単なる成文法ではなく、慣習になっていなければ成立しているとは言えません。帝国憲法だろうと占領憲法だろうと、成文憲法がなかろうと、デモクラシーが機能していれば憲法があると言えます(英国のように)。しかし、現在日本は憲法が死んでいると言えましょう。憲法は戦前に死に、その後GHQのおかげで復活したかに見えましたが、実際は一度も生き返っていないと思います。次回、いよいよ最終章「憲法はよみがえるか」

日本人のための憲法原論

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