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怪獣大戦争(★★★★)


怪獣大戦争マーチ(映像はアップロードした人がつけた無関係のもの)


おすすめ度★★★★(5段階)
1965年、東宝製作。
監督:本多猪四郎特技監督円谷英二、音楽:伊福部昭、脚本:関沢新一
出演:宝田明、ニック・アダムス、水野久美久保明、沢井桂子、田崎潤、土屋嘉男


 ゴジラシリーズ第6作。観客動員数513万人を記録。初めてゴジラシリーズに異星人が登場。ゴジラシリーズというより、「地球防衛軍」「宇宙大戦争」の系譜に連なるSF大作といった感じだ(音楽的にも、怪獣大戦争マーチは宇宙大戦争マーチを一部継承している)。同時上映は何とあの「エレキの若大将」だった。
 「○○大戦争」という映画は「宇宙大戦争」「世界大戦争」「怪獣大戦争」がある。世界大戦争だけは他の二つと路線が違い、第三次世界大戦をシリアスに描いた映画である。


 ストーリー:196X年、木星の13番目の衛星が発見され、P−1号がその調査に向かう。X星に到着した二人の乗組員の前に、キングギドラが現れる。X星人の地下基地に招かれた二人は、キングギドラを撃退するために地球のゴジララドンを貸してくれないかと頼まれる。勝手に返事をするわけにもいかないので、P−1号は地球に帰還し、会議の結果、怪獣を貸すことにした。なぜならX星人は、見返りにガンの特効薬をくれると言うのだ。これで人類の科学は一気に進歩する。宇宙友好時代の到来だ。そしてゴジララドンはX星に運ばれていった。しかし、X星人が渡してきた特効薬の情報が入ったテープを再生してみると、何とそれは地球を植民地にするという宣戦布告だったのだ! X星にいたキングギドラは最初から操られており、地球征服の邪魔だったゴジララドンも、今やX星において同様に操れるようにされてしまった。三大怪獣と空飛ぶ円盤が地球攻撃にやってきた!
 クライマックスは円盤と怪獣たちの地球攻撃、人類のX星人に対する反撃、怪獣同士の戦いと、大迫力シーンの連続なのだが、怪獣同士の戦いが意外にあっさりしていて、人類対宇宙人のほうがメインになっているのは、小さな子供には不満かも。
 地球人とX星人の惑星を越えた恋愛、発明家の防犯ブザーなどが話の筋に絡んできて、最後には全てが繋がるのは素晴らしい。今では小学生からOLまで持っている防犯ブザーだが、当時はまだ誰も持っていなかったのだろうと思う。
 全て電子計算機の計画通りの国家戦略、そして人生まで計算機に従うX星人たちは、まるでオーウェルの「1984年」のようだ。女性がみんな同じ顔というのも怖い。独特の衣装、分かりやすい名前、土屋さんの演技と相俟って、日本映画を代表する宇宙人となった。
 X星人の統制官がなんと、この作品の前に黒澤明の「赤ひげ」で重要な役(赤ひげの弟子)を演じた土屋嘉男さん! ミステリアンから8年も経っているのに、二度目の宇宙人役だ。今回は割と普通の喋り方で、顔も目は隠れているがそれ以外は出ているため、土屋さんであることがはっきりと分かる。今回も見事に演じてくれた。土屋さんによれば、黒澤明は「俺の映画が汚れるから変な映画には出るなよ。イノさん(本多猪四郎)の映画ならいいけど」みたいなことを言われていたらしい。DVDのコメンタリーは当然、土屋嘉男さん。黒澤明についての話がずいぶん多く、やはり黒澤組の人間なのだ、と思わせられる。「クロサワさーん!」を読んだこっちにしてみれば、もっと特撮の話をしてくれい、と思うのだが。


 じゃんじゃーん!と、東宝マークとともに鳴り響く音。そして始まる怪獣大戦争マーチ(メインタイトル)。この曲を知らない人はいないと断言できる。このメインタイトルだけで、観客は東宝特撮世界の住人となってしまう。劇中ではクライマックスの人類反撃シーンにも一回使われている。怪獣大戦争マーチは本当に名曲。血沸き肉踊る。
 芸術性と娯楽性が見事に合致した第1作「ゴジラ」を除けば、キンゴジ(キングコング対ゴジラ)か、ゴジラvsビオランテか、怪獣大戦争か、というくらい、ゴジラシリーズの中でも娯楽大作になっている。私は子供の頃、「怪獣が三匹(ゴジララドンキングギドラ)しか出ない怪獣大戦争より、三大怪獣・地球最大の決戦(ゴジララドンモスラキングギドラと戦う)のほうがモスラの分だけ面白いに違いない」と思っていた。しかし! ストーリーや音楽などを考慮に入れていなかったのだ。今は断然、こっち。モスラ(とザ・ピーナッツ)分より土屋嘉男分のほうが重要だった。
 この怪獣大戦争は、ストーリー、演出、音楽、役者、登場怪獣、全てにおいて文句なしの娯楽大作。これ以降、ゴジラに限らず、特撮映画や黒澤映画に限らず、日本映画は衰退する一方であった。その全盛期の最後の名作だ。「我々は脱出する!未来へ向かって脱出する!まだ見ぬ未来へ向かってな」土屋さんと一緒に空飛ぶ円盤を探した三島由紀夫も、この映画を見たのだろうか。我々も環境を破壊し続ければ、X星人のように酸化水素(水!)が貴重という時代が来るのかもしれない。


 それにしても、日本映画を代表する「Kurosawa」と「Godzilla」の関係を考える時、不思議に思う。黒澤映画と特撮映画の共通点は、まずは会社が同じ東宝であること。最高傑作が1954年の作品であること(七人の侍ゴジラ)。ピークが1965年までであること(怪獣大戦争と赤ひげ)。黒澤明監督と本多猪四郎監督が親友同士であること(晩年は一緒に映画を制作した)。志村喬、土屋嘉男らの特撮映画への出演。ゴジラは第9作「怪獣総進撃」まで伊福部昭と佐藤勝の二人によって音楽が書かれてきたが、一方の黒澤映画は、三船敏郎が出演した「醉いどれ天使」から「赤ひげ」まで、17作品のほとんどが早坂文雄と、彼の死後、弟子の佐藤勝によって書かれた。しかし唯一の例外が三船出演2作目「静かなる決闘」であり、何とその音楽は伊福部昭であった。そして早坂文雄伊福部昭の親友で(中学か高校時代から)、伊福部さんは佐藤勝とも親しかったと思われる。このように、音楽は同じ人たちによって書かれているし、監督は親友同士であり互いの映画を認め合っている仲で、会社が同じため出演する役者もかなり被っていて、時期も見事に一致する。どちらも十分に芸術性があり、それでいて素晴らしい娯楽で、人間の内面や美についてもよく捉えていて、今なお世界中の人々に愛されている作品ばかりである。決して内容は似ていないが、製作者たちの関係を考えると、不思議な因縁である。黒澤明本多猪四郎三船敏郎ゴジラ、早坂・佐藤と伊福部、最高です! 日本映画万歳!



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