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モスラ対ゴジラ(★★★★)


おすすめ度★★★★(5段階)
一言紹介:シリアスとコメディの共存、素晴らしい音楽と特撮、ザ・ピーナッツの歌を聴け!
1964年、東宝製作。
監督:本多猪四郎特技監督円谷英二、音楽:伊福部昭、脚本:関沢新一
出演:宝田明、星由里子、小泉博、ザ・ピーナッツ藤木悠佐原健二、田島義文、田崎潤、藤田進。


 まず言っておきたいことは、最近の私は東宝特撮映画の特撮より本編や音楽を楽しんでいるということ。本編とは人間が演技するシーンのことだが、ここではストーリーとしておく。確かに怪獣が都市を破壊したり、自衛隊が怪獣と戦ったりするシーンは好きだが、迫力は古いだけにどうしても物足りない部分がある。むしろ構図の美しさとか、そんなところがいいのだが、結局ドンパチを目当てに見ても、満足できないものなのだ。しかし、それでも面白く鑑賞できるのは、ストーリーや音楽にも魅力があるからだ。本多猪四郎監督の演出と、関沢新一や木村武の脚本、伊福部昭の音楽、特撮だけでなく黒澤映画などでも活躍する東宝の俳優陣。シリアスで現実的な物語に、ところどころ笑いがあり、ずっしりしたテーマも根底にある。ゴジラ(特撮部分)をどんどん子供向けにしてしまった円谷英二と違い、本多監督はどこまでも大人のエンターテイメントを志向する。なぜなら、子供は大人の世界を覗きたがっているのだから。特に「怪獣大戦争」ではシェーをするゴジラだが、その本編は立派なSFだった。このモスラ対ゴジラは、特撮においても手抜きや子供受けを狙った部分はない。しかしゴジラモスラの対決は、迫力がある一方で結構退屈する。円谷英二の偉大さは子供の時からよく知っている。だから今は本多、伊福部の二人に惚れ惚れするのだ。


 ストーリー:台風によって静の浦に漂着した謎の巨大卵。新聞記者や調査団が向かうが、何と既に興行師が地主から卵を買ってしまっていた。インファント島からやってきた小美人が新聞記者の宝田明、星由里子、科学者の小泉博にモスラの卵を返してほしいと言うが、所有権は興行師にあるからどうにもできない。三人は新聞を通して世論に訴えるが、卵を中心とした新テーマパークの宣伝になってしまうばかり。小美人は帰ってしまうし、半ば諦めていたその時、ゴジラが出現した! 四日市、名古屋を襲撃し、東へ進むゴジラ。三人はモスラ(成虫)にゴジラを倒してもらうため、インファント島へ向かうが……。
 「モスラ」公開から3年、ゴジラ第3作「キングコング対ゴジラ」から2年、荒れ狂うような打楽器とゴジラのテーマで始まる、720万人を動員したゴジラ第4作。当時の天長節宝田明30歳の誕生日(多分)に公開された。キングコングと戦ったゴジラが、今度はあのモスラと夢の対決! この映画や「モスラ」を改悪した平成の「ゴジラvsモスラ」ではないので注意。
 シリアスな中にも宝田明、星由里子、藤木悠たちの楽しい掛け合いが笑いを誘う。キングコング対ゴジラほどではないにしても、結構コメディ色がある。しかし田島義文と佐原健二の2人が、ああしてこうするシーンは子供には見せたくないくらい怖い。まあこの程度で悪影響などあるはずもなく、むしろ重要なテーマがいくつも出てくるから、子供にも見せてあげてほしい映画だ。
 主役三人組だけでなく、歌も演技も素晴らしいザ・ピーナッツ、ボケ担当の藤木悠(卵の食べすぎで死ぬぞ)、悪役の佐原健二・田島義文、気難しいデスクの田崎潤自衛隊指揮官の藤田進など、どのキャラクター、俳優も生き生きしている。それがキンゴジやモスゴジの魅力の一つ。ストーリー上もそれが重要であり、なんでも商売にしてしまう人間、ジャーナリズムのあり方、原水爆実験反対、人間不信(個人の他人不信というより、皆が人間そのものを信じられなくなる)のない社会、といったテーマが見事に描かれているのだ。
 特撮は、ゴジラの出現シーン、都市襲撃、モスラゴジラの対決、自衛隊ゴジラの対決など、見所満載。また、ザ・ピーナッツの合成が綺麗にできている。本当に小さな妖精のようだ。それから最後のほうでゴジラが田舎の村に出現するシーン、合成はそれほどうまくいっていないが、それが余計に怖い。この辺のシーンは夢に出てきそうなくらい、何だか不思議な恐怖感がある。案外、都市襲撃より田舎に出現するゴジラのほうが迫力があるのだ。ゴジラの顔に関しては、初代とモスゴジが昭和では特に素晴らしいと思う。私が一番好きなのはビオゴジ(vsビオランテゴジラ)。
 音楽は伊福部昭本多猪四郎監督は「怪獣総進撃」までの9作中、6作のゴジラを制作したが、それらの音楽は全て伊福部さんが担当した。特に第1作とこの作品の音楽が優れており、ゴジラの曲だけでなくモスラの曲、ザ・ピーナッツや合唱団の歌が素晴らしい。「モスラの歌」も一度だけ流れるが、伊福部さんの曲ではないため、あくまでおまけである(この歌はあまり好きではないが、ザ・ピーナッツの歌のうまさ、アカペラであることがグッド)。やはり「聖なる泉」「マハラ・モスラ」が素晴らしい。音楽だけでも価値のある映画だ。日本人の歌は、でえきれえだが、伊福部昭の作曲、ザ・ピーナッツの歌唱には文句のつけようがない。「ゴジラvsモスラ」の音楽に決定的に欠けていたもの、それはザ・ピーナッツの歌。
 これ以後、ゴジラから悪、恐怖という要素が消えていき、ゴジラ対へドラあたりから完全に正義の怪獣となってしまう。シナリオ的にもマンネリが始まり、特に「南海の大決闘」あたりから酷くなる。しかしながら、ここまでの4作は大人の鑑賞に堪えうる作品であり、それは現在でも変わらない。東宝特撮映画ファンならゴジラ第9作「怪獣総進撃」まで、本多猪四郎監督ファンならゴジラ第10作「オール怪獣大進撃」までは見ておきたい。