人権擁護法案マガジン・ブログ版

人権擁護法案マガジンのブログ版です。人権擁護法案反対VIP総司令部まとめサイトはこちら http://zinkenvip.fc2web.com/

宇宙大戦争(★★★)

おすすめ度★★★(5段階)
1959年、東宝製作。本多猪四郎:監督、円谷英二:特撮監督、伊福部昭:音楽、主演?:土屋嘉男。
ゴジラ」「ラドン」「地球防衛軍」ときて、そしてこれ。オールスター映画「日本誕生」の影響か、キャストがちょっとしょぼいが、その分、土屋さんがかなり目立っております。「地球防衛軍」ではミステリアンだったが、今回は宇宙人に操られてとんでもないことをします。しかし、最後は大活躍。この役は土屋さん以外には考えられません!(土屋さん、もしかして「日本誕生」を辞退してこっちを選んだとかだったりして。いや、まさかね。)


ストーリー:怪事件続発。どうやら宇宙人の仕業ということで、国連で対策会議が開かれる。結論は、「友好を、それが無理なら戦争を」だった。しかし、そこでイランの科学者が宇宙人に操られ、熱線砲を盗もうとする。彼の口から出た言葉は、「やれるか?やってみろ!地球はナタールの植民地になるのだ」だった! 地球軍は急遽ロケットを飛ばし、月基地を奇襲する。宇宙人の残存勢力(UFO大艦隊)が地球上空に襲来。国連各国は協力して戦闘ロケットを多数飛ばし、さらに熱線兵器を以って母艦を攻撃する。それに対しUFOは宇宙魚雷(隕石型)と冷線砲で大都市を破壊する。宇宙と地球を舞台に大戦争が始まった。


ストーリー、特撮ともに「地球防衛軍」に劣るかもしれないが、なかなか悪くありません。特に光線が非常によくなっており、それを活かした宇宙決戦に当時の人は本当に興奮したんじゃないだろうかと思います。あのドッグファイト、地球軍のロケットと宇宙人のUFO、そして互いに発射する光線が、縦横無尽に大画面を飛び交います。なんともスピーディで、本当に超高速の大戦闘。また、少ないであろう予算の中、素晴らしいセットが多数作られ、リアリティに繋がっています。国連の会議場など特に。


ガガーリンが宇宙へ行くのが2年後、アポロ11号は実に10年後であり、この映画の描いた世界は、かなりの部分が想像によって作られたことがわかります。実際の宇宙そっくりで、今見てもなかなか素晴らしい。また、この年はソ連のルナ1〜3号や、米国のパイオニア4号が打ち上げられ、月が注目されました。


宇宙の大戦争を盛り上げるのが「宇宙大戦争マーチ」です。地球防衛軍と違って途切れることなく流れるので、大変盛り上がります。音楽は他に「宇宙大戦争タイトルマーチ(メインテーマ)」「夜曲(愛のテーマ)」が有名です。
なお、宇宙大戦争マーチは日立の黒澤明CMで使われていました。あの映像には本多監督も映っているそうで、さらに黒澤映画といえば土屋嘉男、土屋嘉男といえば宇宙大戦争、ということだったりして。まあ実際はそれよりも、この映画の中にHITACHIの文字が出てくるので(ロケットの中など)、きっとスポンサーだったのでしょうね。その関係でしょう。
宇宙大戦争マーチは主に5つの部分から出来ているのですが、最初がお馴染み自衛隊マーチ。次が宇宙大戦争のオリジナル。その後の3つは「大怪獣バラン」で使用された曲です。自衛隊マーチは後に怪獣大戦争マーチとして有名になりますが、この映画の前にはゴジラ(第1作)で使われ、最初は日本軍の要請で書かれた「古典風軍楽・吉志舞」という曲でした。この曲は現在、自衛隊の演奏したものが有名ですが、もう一つ別の録音は「黒船以来」というCDに愛国行進曲やいろいろな吹奏楽曲とともに収録されています。どうやら戦争中から有名なメロディらしいのです。神功皇后の凱旋において演奏された、曲名だけしか伝わらない「吉志舞」は、伊福部昭の手で復活し、この宇宙大戦争では未来と神代の融合という感じのメロディになりました。
ちなみに、DVDに入っている予告編では、地球防衛軍マーチが流れています。


ID4などのアメリカ映画と違うと思う点は、世界会議が頻繁に開かれることです。アメリカ映画では米国政府だけが戦って、「他の国もそれぞれ勝手に宇宙人と戦ってくれ」という感じですが、この宇宙大戦争では、国連?の会議で全てが決定されていきます。もちろん国連という主体があるわけではありません。各国が国連という場で会議をするのです。


宇宙大戦争 [DVD]

宇宙大戦争 [DVD]

写真:JSFは日本宇宙軍という意味か?しかし劇中ではFFEと書いてある。

大東亜戦争との比較

ところで、この「宇宙大戦争」は大東亜戦争をモチーフにした感じがします。まず最初に、地球側が「友好を、それが無理なら戦争を」と考えている点です。そこに青天の霹靂、「地球を植民地とする」と発言する操られたイラン人。これはハルノートを突きつけられたようなものです。そして地球軍は「敵の前線基地、月を奇襲する」という作戦に出ます。その出征の時、日の丸がはためき、軍隊(本物の自衛隊)がマーチを演奏し、人々は万歳を叫ぶのです。何とも「大東亜戦争チック」ではありませんか。しかし、奇襲は失敗したかに見えます。なぜなら、作戦が敵にバレバレだからです。しかし、その後なぜか敵は大した反撃をせず、基地は陥落します。さて、ここから先が歴史とは違う点です。なぜなら地球側が勝利するからです。敵の残存大艦隊は、地球上空に襲来します。地球軍はそれに備えて、各国で戦闘用ロケットと熱線砲(パラボラ型)を用意しました。ロケットには日の丸や星条旗が描かれていて、国連軍であってもあくまでその各国の軍隊であることが分かります。歴史では、決戦主義のようでいて日本は決戦を避け続けました。全ての空母、戦艦を敵にぶつけることはしませんでした。今回、地球軍は全勢力(飛行機=ロケット、戦艦=熱線砲)を敵にぶつけます。ロケットは先端に一方向に発射する光線がついており、敵を攻撃するには一直線に突撃するほかありません。劇中では、特攻隊として描かれています。特攻隊は大戦末期以前は、決死隊のことでしたから、これを特攻隊と呼んでおかしくありません。UFOはあらゆる方向に光線を発射するので、圧倒的に不利です。地球軍は決死の攻撃で、遂に敵を撃破します。地球上空での大決戦は、小笠原諸島あたりで艦隊決戦をするようなものです。最初にこの映画を見た時に、違和感を感じたのは「なぜああも簡単に奇襲が成功したのか」ということでしたが、知っていてわざと奇襲させたか、あるいは知っていても防ぎようがなかった、としか考えられず、まさに真珠湾攻撃と同じに思えるのです。しかも、基地を奇襲した地球軍は、人間が持てる大きさの熱線砲が主な武器であり、「普通ならそんなので基地を攻撃できない」と思います。一方、真珠湾攻撃も、「飛行機では戦艦を沈められない」という先入観を打ち破りました。その後の艦隊決戦で地球が勝利するのは、熱線砲=大艦巨砲主義、ロケット=特攻隊というわけです。しかもその時、UFOはわざわざ熱線砲のある地球軍基地まで来ます。小笠原決戦というわけです(のこのこ米海軍が来たら迎え撃つ作戦)。本当にこんな感じでアメリカに勝てたらよかったのですけどね。ちなみに、「妖星ゴラス」でもゴラスの引力でゴラスに落下する宇宙船の乗組員は、最後に万歳三唱していました。

日の丸と自衛隊

自衛隊のバンド。

万歳でお見送りする人々。これらは3枚とも月奇襲の見送りのシーン。