人権擁護法案マガジン・ブログ版

人権擁護法案マガジンのブログ版です。人権擁護法案反対VIP総司令部まとめサイトはこちら http://zinkenvip.fc2web.com/

日本資本主義の精神(山本七平)

この本は1979年出版だから、まだ日本経済が成長し続けていた頃だ。今から考えると、当時既に日本資本主義の精神は荒廃してきており、山本七平を無視したから日本経済は崩壊した、というような状況にある。この人の業績は他にも多いだろうが、少なくともこの本は第一級のものだ。小室直樹との共著「日本教社会学」などと合わせて読むと理解しやすい。この二人の社会学的研究は、日本人にとって何よりも優れた薬となるだろう。下のブログはこの二人の影響を大きく受けていると思われる。
武蔵野航海記
http://plaza.rakuten.co.jp/sailmssn/
以下、私(VIP)がこの本を以前読んだ時の感想をもとに要約する。

  • 日本の機能集団(企業、官庁等)は共同体である(何時からかは不明)。
  • 終身雇用も年功序列も、共同体には当たり前のことであり、そういう契約があるわけではなく、日本式経営というものでもない。
  • 共同体はそれ自身のために活動し、機能集団として機能しない場合がある。
  • 一説によると過労死は企業が共同体であることが原因だとか。
  • 当たり前だがフリーター、バイト、パート、派遣は共同体の一員ではない。
  • 機能集団が共同体になることが、日本資本主義の精神の一部なのかは実はよく分からない。


(日本の企業は共同体だから)「あいつは会社をクビになった」という言葉は、その人間のある面、もしくはすべての面の人格的な否定をも意味している。したがって……辞表を提出させて、自由意志による退職という形をとるのである。(43P)


そもそも、年功序列制や集団間移動の困難さ(註:終身雇用)などは、共同体の特徴であって、日本社会の特徴ではない。アメリカであろうとどこであろうと、共同体においては、これらの特徴はみられるのである。しかし、一般的にいって、アメリカなどの近代社会においては、普通、機能集団と共同体とは分化する傾向がみられる。つまり、宗教共同体、人権共同体、地域共同体などが、企業などの機能集団と重なることはなくなってゆく傾向が一般的である。(小室直樹「危機の構造―日本社会崩壊のモデル」157ページ)


日本の官僚制および官僚化した企業組織について、ユージーン・ダテル曰く、「(ビジネスなどの)失敗に関しては誰にも責任を取らせていない。市場での失敗から学ぶことをしない。ただ一つだけ許されない種類の失敗がある。それは官僚的なシキタリを破ることである」(確か、小室直樹「日本国民に告ぐ」)
これには伝統主義と共同体という二つの理由があると思う。二つが一体となって、日本を破滅に追いやるのだ。大東亜戦争の敗戦しかり。

  • 労働は宗教的行為(成仏のため、あるいは日本神話・教育勅語?)。
  • 結果として正当に得た利潤は正しい(善)。多ければ多いほどよい。
  • 定年退職になると生きがいをなくすことになる。
  • エコノミック・アニマルと呼ばれる原因はこれ。
  • ニートは日本資本主義の精神の崩壊が原因か?


鈴木正三は、農民は農業を、職人は工業を、商人は商業を一心不乱に行うことが、成仏のための修行であり、それ以外の修行や念仏は不要であると説いた。


正三のこのような発想には、戦乱から秩序へという時代的背景があったであろう。……「戦国の夢」は消え、一種の精神的閉塞状態を招来した。士農工商は徐々に固定していき、人びとが何に「生きがい」を求めてよいか分からぬ時代が来た。……もとを探れば、やはり禅からきたものであろう。……一心不乱に剣術を学ぶのは「殺し屋」になるためでなく、禅の修業と同じであるという考え方である。(102P)


(石田)梅岩が説いたのが働く者の倫理なら、(上杉)鷹山などの明君が残したものは経営者の倫理なのである。(148P)


内村鑑三の「代表的日本人」には上杉鷹山二宮尊徳が出てくる。尊徳の「二宮翁夜話」もよい。特に二宮尊徳が説くのは、分度を定めて倹約すること、物には感謝し大切にすること。

  • 以下、ちょっと関係ない話

日本において、血縁社会の原則を明確に法制化しているのは、明治における皇室典範だけだといわれる。すなわち皇位継承は男系の男子に限り、その継承順位は血縁の順位であって、擬制は一切認められていない。(37P)


日本においては男系が血の繋がりであり、支那との違いは養子を認めていることである。しかし皇室において養子を認めれば、私でも天皇になれることになる。そもそも日本人は血の繋がりを重視しないから、養子を認めているので皇室が特に血縁を重視する集団である以上、男系継承が守られる必要がある。


http://members.jcom.home.ne.jp/j-miyaza/page400.html
小室氏によれば、当然中国では宗族の異なる血縁でないものを養子にすることはできない。欧米では日本と同じに他人を養子にすることはできる。しかしその養子には相続権はない。その点で日本と異なる。

日本資本主義の精神 (B選書)

日本資本主義の精神 (B選書)