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伊福部昭の芸術4 宙─SF交響ファンタジー

伊福部昭について

今年の2月8日、91歳で亡くなられた伊福部昭さん。大国主神の子孫という言い伝えがある、出雲の神主の家系に生まれる。ウィキペディアによれば、「昭の代で67代目」。生まれも育ちも北海道。


http://www.library.ne.jp/otofuke/osirase0.htm
伊福部昭氏は、音更村長に就任された父に伴われて大正12年の夏、札幌から音更小学校4年に転入され、……ちょうど氏の少年期から青年期(9〜21歳)という最も多感な人格形成期と重なって、村で聴いたアイヌ音楽や開拓移民の唄う民謡などが、後の氏の作曲活動に大きな影響を与えたとご本人が述べておられます。


http://www.shinkyo.com/concerts/p145-2.html
伊福部「アイヌの音楽からは、音型や何かはなんにも影響を受けていません。ただ、自分の書いたものを発表するということへの抵抗感がない。彼らはすぐ即興でやりますからね」


影響はそれほど受けていなくても、やはり日本音楽とアイヌ音楽に触れたことは大きいのだろう。そこにそれ以外の東洋、オーケストラの西洋が融合した。


http://ja.wikipedia.org/wiki/伊福部昭
パリでアレクサンドル・チェレプニン賞が催されると、審査員の中にモーリス・ラヴェルの名を見つけ、ラヴェルに見てもらいたいという一心で、『日本狂詩曲』を賞の規定に合わせ第1楽章『じょんがら舞曲』をカットして応募する。結局ラヴェルは病気のため審査員を降りたが、チェレプニンを初めジャック・イベールやアルベール・ルーセルといったフランス近代音楽を代表する作曲家たちが審査にあたった。このコンクールは日本人に対して開かれたコンクールだが、審査会場はパリであった。……結果伊福部が第1位に入賞し、世界的評価を得る。


映画音楽としては、東宝特撮映画のほかに「ビルマの竪琴」「大魔神シリーズ」「座頭市シリーズ」「忠臣蔵」「日本誕生」「わんぱく王子の大蛇退治」などを担当した。黒澤明の映画では「静かなる決闘」を担当したが、黒澤映画の早坂文雄とは親友で、早坂の弟子である佐藤勝とも親しかった。


北海道音更町のサイト
http://www.town.otofuke.hokkaido.jp/gaiyou/choushou.html
伊福部さん作曲の町歌を聴くことができる。


来年の3月4日に豪華なコンサートがあるが、東京は遠いので私は行けません。CDで出るでしょうから、それを待ちます。でも本当は行ったほうがいいんだ。

SF交響ファンタジーについて

英語ではSymphonic Fantasiaという。作曲者によれば、「ファンタジー」とは単なるメドレーという意味。


http://www.nikkeibp.co.jp/style/life/joy/classic/050412_godzilla/index1.html
当初、伊福部氏は、「映画音楽は映画のためにあるのだから」と難色を示したという。しかし結果的にファンの熱意に折れ、氏が担当した映画音楽からメドレーで3つの組曲が生まれた。それが「3つのSF交響ファンタジー」である。


第1番から第3番まで演奏されたものは、主に3つあり、初演、ゴジラ〜シンフォニック・コンサート、このCDだ。前の二つは廃盤なので、これを聴くしかない。音質がいいのはこれ。演奏がいいのもこれ。ただ、マーチのテンポが遅めなので、速いほうがいいなら初演を聴くのがいい。シンフォニック・コンサートはこのCD以上に遅い。なお、映像作品として、初演に合わせて映画の名場面が流れる「ゴジラ・ファンタジー」があるが、DVDは「ゴジラ・ファイナル・ボックス」という全作品ボックスの特典で、バラ売りはビデオしかない。このCD以外では、そのビデオを持っていれば、音楽も映像も完璧だ。第1番だけ演奏したコンサートは数多いので、伊福部音楽のコンサートのCDを適当に買っていれば、出会うことが出来る。

このCDについて

指揮:広上淳一、演奏:日本フィルハーモニー交響楽団
ご本人の監修で製作されたCDシリーズが、「伊福部昭の芸術」だ。現在、「卒寿を祝うバースデイ・コンサート」を含めると、全8作品が発売されている。その中でも、最も親しみやすい作品が、この「伊福部昭の芸術4 宙─SF交響ファンタジー」だ。


全体的にマーチはテンポが遅め。初演と比べるとよく分かる。その分、美しい曲や怪獣の曲(低音がすごい)は素晴らしいし、マーチもよい。SF交響ファンタジーは第1番だけ演奏されることが多いが、このCDでは第2番と第3番も楽しむことができる。


伊福部昭の芸術」シリーズは作曲者監修であり、


http://ameblo.jp/x1wand/entry-10013896698.html
>このシリーズで指揮をとった広上淳一日経新聞に寄せた伊福部への追悼文の中で、録音に当たって伊福部から「こちらがクタクタになるほど細かな修正を求められた」と回想している。


解説でも伊福部さんは「今回は、皆さんが私の言うことを信用してくれ、少しでも作曲家の注文通りにしてあげようと配慮し続けてくれました」と語り、指揮者だけでなく演奏者にも注文したことが分かる。


また、佐藤勝が指揮した「ゴジラ〜シンフォニック・コンサート」のSF交響ファンタジーも、異様にテンポが遅いのだが、このコンサートでは佐藤勝と伊福部昭が綿密に打ち合わせをしており、ある程度は作曲者の意向だったと思われる。マーチのテンポが遅いのはそういう理由によるのだ。


必ず大音量で聴いてください。音量が小さいと、どんなメロディなのかすら、はっきりしない曲もあります。クラシックもロックも映画も、コンサート(映画館)では大音量です。音楽は大きな音で聴くのがデフォ!(でも耳が痛くならない程度にしましょう)。音量によって印象はまるっきり違います。


怪獣のテーマ……1,2,3,4,6,7,12,13,15,17,22,23,27
行進曲……8,9,10,18,19,20,21,25,26,28,29
美しい曲……5,11,14,16,24


時間で言うと
怪獣のテーマ……16分40秒 38% 1曲あたり1分17秒
行進曲……15分40秒 36% 1曲あたり1分25秒
美しい曲……11分20秒 26% 1曲あたり2分16秒


音質はよいほうだと思う。息を吸う音も聞こえて面白い。


宙-伊福部昭 SF交響ファンタジー

宙-伊福部昭 SF交響ファンタジー

SF交響ファンタジー曲目解説

第1番
  1. ゴジラの動機……「キングコング対ゴジラ」以降の昭和ゴジラのテーマの前半部。平成ゴジラのテーマでも前半部となった。
  2. 間奏部……中間部。これとほぼ同じ曲が映画「忠臣蔵」の討ち入りで使われた。
  3. ゴジラ」タイトル・テーマ……対ゴジラマーチ。第1作のメインテーマで、いわゆるゴジラのテーマ。ここまでの3曲が平成ゴジラのテーマになった。
  4. キングコング対ゴジラ」タイトル・テーマ……「キングコング対ゴジラ」メインテーマ。本来は歌があるので、いつかSF交響ファンタジーでも合唱ありのバージョンを作ってほしいものだ。なお、「ゴジラvsデストロイア」のエンディングでも対ゴジラマーチと組み合わされた。当時はSF交響ファンタジーを知らなかったので、どうしてキングコング?と思ったものだが、違和感はなかった。
  5. 宇宙大戦争」夜曲……宇宙大戦争では主に二回使用されたが、印象としては土屋嘉男さんの演じる岩村のレクイエムである。元の曲はピアノがメインだった。
  6. フランケンシュタイン対地底怪獣」バラゴンの恐怖……ゴジラのテーマと似た曲。夜曲との雰囲気の違いが際立っている。
  7. 三大怪獣 地球最大の決戦」……「三大怪獣 地球最大の決戦」のメインテーマであり、それ以降の映画でも怪獣の対決シーンで使われた曲。バラゴンのテーマとの繋がりはすごく自然だ。昭和ゴジラのテーマの後半部は、SF交響ファンタジーではここでしか聴けない。
  8. 宇宙大戦争」タイトル・テーマ……別名、宇宙大戦争タイトルマーチ。映画とは違い、静かに始まる。いよいよ曲もクライマックスという雰囲気が出ている。
  9. 怪獣総進撃」マーチ……綺麗に繋がっている。もう一度宇宙大戦争タイトルマーチに戻り、再び怪獣総進撃マーチとなる。
  10. 宇宙大戦争」戦争シーン……宇宙大戦争マーチ。ここでは2曲目の「ゴジラのテーマ中間部」と似たメロディで始まる。自衛隊マーチとして有名な最初の部分はカットで、いきなり2番目から始まる。「フランケンシュタイン対地底怪獣」で使われた「探索のマーチ」の部分もカットされて、代わりに再び怪獣総進撃マーチとなる。
第2番
  1. 「奇巌城の冒険」タイトル・テーマ……映画は三船敏郎主演なのに、なぜかDVDが出ていない。走れメロスの舞台を中東にしたものらしい。「聖なる泉」などとは系統の異なる美しさを持った名曲だ。
  2. 三大怪獣 地球最大の決戦キングギドラのテーマ……2度流れる。バラゴンのテーマと同じく、前の曲との違いが際立つ。
  3. キングコング対ゴジラ」格闘音楽……キングコングゴジラの対決シーンの曲だが、平成のゴジラvsキングギドラでも、キングギドラのテーマと合わせて使用された。
  4. モスラ対ゴジラ」聖なる泉……作詞も伊福部さん。本来はザ・ピーナッツの歌だが、ここではやはり歌はない。ゴジラvsモスラのエンディングでも、感動的なアレンジで使われた。ちなみに「モスラ〜や、モスラ〜」は伊福部さんの曲ではない。それは、映画「モスラ」の担当ではなかったからだ。SF交響の中で一、二を争う美しい曲。
  5. 「大怪獣バラン」タイトル・テーマ……これも本来は合唱があったが、確か劇中にはオーケストラだけのバージョンもあり、そちらが元になっていると思われる。
  6. 三大怪獣 地球最大の決戦」山岳音楽……とても静かな曲。直接関係はないだろうが、バランも山岳の怪獣であった。
  7. キングコングの逆襲」逃走音楽……突然やかましくなるが、違和感はない。怒涛のマーチへとうまく繋がっている。キングギドラのテーマに似た曲。
  8. キングコングの逆襲」エレメントX……遅いテンポで映画「忠臣蔵」にも使用された。
  9. 「サンダ対ガイラ」自衛隊マーチ……L作戦準備、あるいはメーサーマーチ。実にいい演奏だ。平成ゴジラでは、「ゴジラvsモスラ」では映画と同じアレンジで、「ゴジラvsデストロイア」ではこれとほぼ同じアレンジで使われた。オリジナルとは音の高さが違う。
  10. 「空の大怪獣ラドン」飛行音楽……わずかな時間、ラドンが飛行するときの曲が流れるが、全く違和感はない。
  11. 「サンダ対ガイラ」自衛隊マーチ……終わり。
第3番
  1. 怪獣総進撃」タイトル・テーマ……「怪獣総進撃」のメインテーマは、この曲と怪獣総進撃マーチから構成されているが、映画と違いここでは2回流れる。
  2. キングコングの逆襲」メカニコングのテーマ……元は「キングコング対ゴジラ」で使われた曲。
  3. キングコングの逆襲」愛のテーマ……第1番の夜曲と違い、ティンパニ(打楽器)によって南洋の雰囲気が作られている。
  4. 海底軍艦」テーマ……突然始まる海底軍艦マーチ。いよいよSF交響ファンタジーも終わりが近い。映画よりかなり速い演奏。
  5. キングコング対ゴジラキングコングの輸送……コング輸送作戦マーチ。この曲は2回演奏されるのではなく、映画の半分の長さで終わる。珍しい雰囲気のマーチだ。
  6. キングコング対ゴジラ」格闘音楽……キングコングと大ダコの戦い。キングコング逃走音楽と同じく、実に迫力がある。
  7. 海底軍艦」マーチ……再び海底軍艦マーチが怒涛のテンポで演奏される。シンバルがバンバン鳴っている。戦後の日本の「軍艦マーチ」だ。いや、軍艦マーチより帝国海軍っぽい曲である(海底軍艦は帝国海軍の兵器だから当然か)。なぜかこの曲だけマーチの中では初演よりテンポが速い。
  8. 地球防衛軍」マーチ……自然に繋がっている。映画ほどの「必死さ」は感じられないが、いい演奏だと思う。後半は速くなる。SF交響ファンタジーは第1番だけでなく、第3番まで聴かなければやはり楽しくない。

倭太鼓とオーケストラのためのロンド・イン・ブーレスクについて

別名、ブーレスク風ロンド。最初は「吹奏楽のための」だったのが「倭太鼓と吹奏楽のための」となり、そして現在の形になった。「交響組曲 わんぱく王子の大蛇退治」で言うと「スサノオの旅立ち」から始まり、「怪獣大戦争マーチ」に繋がる。途中から「フランケンシュタイン対地底怪獣」の「探索のマーチ」(初出は「大怪獣バラン」)が加わり、この3曲が繰り返し演奏される。どれもSF交響ファンタジーには使用されなかった曲で、まさに余り物には福がある、だ。実質、SF第4番だろう(交響ファンタジーゴジラvsキングギドラ」はSF交響ファンタジーに含めたくない)。指揮者の広上氏は「太平洋戦争中の学徒出陣の光景を連想させる、鬼気迫る音楽」と言うが、「探索のマーチ」は神話を連想させるメロディであり、「怪獣大戦争マーチ」となった曲はもともと神功皇后の凱旋をテーマにした「吉志舞」のメロディであるから、神話を連想させる曲と言えるだろう。なお、バンドのための「ゴジラ」ファンタジーというCDには、和太鼓と吹奏楽のための「ブーレスク風ロンド」が収録されている。
ロンドとはこのような形式の曲のことを言い、ブーレスクとはburlesque=バーレスクで、風刺的喜歌劇、茶番を意味する。作曲者本人によるパロディみたいな意味だろう。だが、決してふざけた作品という雰囲気はない。映画音楽をクラシックに再編することに対する照れ、と受け取っていいだろう。